地面の力をロスなく指先へ|体幹の「固定」が球速を左右する理由
2026/02/02
ボールに強い力を加えようと頑張っているのに、エネルギーが途中で逃げてしまう。
体は大きく動いているのに、出力が途中で消えてしまう感覚がある。
一方で、腕を強く振っているように見えないのに、打者の手元で球がグッと来る投手がいます。
その差は腕の振りでも、下半身の強さでもありません。
生み出した力を“逃がさない体幹”があるかどうかの違いです。
本記事は、野球の投球パフォーマンス向上を目的とした体幹機能解説シリーズの第2部。
山本由伸投手に学ぶ「ムダのない力の集め方」をテーマに、今回は“地面の力をロスなく指先へ伝える体幹の固定”の正体を解説します。
第1部では、力感を消しながら動きを支える「深部のインナーユニット」の役割を紹介しました。
ですが、それだけでは爆発的なパワーは伝わりません。
強いボールを投げるためには、投げる瞬間に
“体の軸がビクともしない状態”が必要になります。
今回は、下半身で生み出したエネルギーをロスなく指先へ届けるための
体幹の「内圧」と「固定」の本当の役割を解説します。
1. 「引き締め」と「固定」の違い
・「お腹を奥に引き込む」: 深層筋を使い、内側から絞り込む(姿勢維持、軽負荷時の安定)。
・「体幹全体を固定する」: 腹筋群、背筋群の全てを使い、体幹全体を360度固める(高負荷・高出力時の安定と保護)。
この「体幹全体の固定」の目的は、体幹内部の腹腔内圧を最大限に高め、下半身からのエネルギーを腕へロスなく伝達することにあります。
投球動作で言えば、踏み込み脚が地面を捉えた瞬間からリリース直前まで、この固定が保てるかどうかで球速と安定性が大きく変わります。
2. 「膨らませる」という誤解を捨てる
この体幹固定は、よく「お腹を膨らませて固める」と誤って説明されますが、これでは腹筋は自ら締めているのではなく、内側から押されて張っているだけの状態になり、安定性は不十分です。
正しい固定の意識は、「内圧に負けて膨らむ」ことではなく、「外側から締め付て、全周を硬く張らせること」です。
・意識の鍵:超強力なコルセットのイメージ
あなたの胴体は外から叩いても凹まない「硬さ」と、内側から締め上げる「超強力なコルセット」を巻いたようなイメージです。
腹筋(前)、脇腹(横)、背筋(後)全部を同時に収縮させて、このコルセットをガチッと締める感覚で体幹の固定を完成させます。
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・力のベクトル
お腹を突き出すように膨らますのではなく、前後、横と全部をしっかり使って、外側から胴体全体を締め付けた結果、内圧が上がって張るという感覚を掴みます。
そのとき、胴体の内側は次のような状態になります。

つまり、体幹固定とは「内側から膨らませる」ことではなく、
外側から全周を締めた結果として胴体の内圧が高まり、張り詰めた状態をつくることです。
3. 限界:張力に頼る安定性からの脱却
お腹を膨らませて張って作る硬さは息の吸い込みや力みによる張力に依存しています。
ですが、王道のトレーニングや投球のような爆発的動作には、この「張力に頼った硬さ」では不十分です。
スポーツの高速な動きでは、遠心力などの強い負荷で軸がブレそうになった瞬間、筋肉が強烈に踏ん張って引き戻し、固定する能力が必要です。
この能力は、腹筋群に自ら力を入れる意識が薄い状態では生まれません。
【訓練から反射へ】
まず、腹筋群と背筋群を意識して、最大限に力を込めて締める練習を徹底的に行います。
例えば、立った姿勢で誰かにお腹や背中を軽く押してもらい、それに負けないように体幹全体を同時に固め続ける練習などが有効です。
この「意識的な締め付け」の訓練を繰り返すことで、体幹が強い負荷を受けた瞬間に、自動的かつ反射的に硬く固定される状態が最終目標です。
高負荷や高速動作で安全と最高のパフォーマンスを両立させるために、まずは「無意識に任せる」のではなく、「自分の意思で最大限に締める」訓練が不可欠です。
📖 連載記事↓
➡️第1部:力感がないのに球が速い理由|体幹の奥のインナーユニットを目覚めさせる方法
➡️第3部:脱力しているのに球が速い投手の正体|最高球速を生む“瞬間的な体幹固定”
執筆者:布瀬川謙介|東中野・落合のパーソナルトレーニングジム「BODY UPDATE LANBO」トレーナー
骨格構造に基づいた「身体の正しい使い方」を追求するパーソナルトレーナー。
野球のピッチングに欠かせない「体幹の使い方」や「股関節の可動」を、解剖学的な視点から分析し、身体のロックを外すアプローチを得意とする。
「根性論ではなく、構造に適合したフォーム作り」をテーマに、怪我のリスクを抑え、本来持っている力を引き出す指導を行っている。
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