トレーナー歴18年で気づいた「野球に活きるスクワット」の正体
2026/04/22
プロでも、自分の身体はわからない
トレーナーとして20年近くやってきて、恥ずかしい話をします。
最近になって、スクワットでハムストリングスや臀筋を使う感覚が分かりました。
今まで使えていたつもりだったけど、実はほぼ大腿四頭筋と脊柱起立筋で頑張っていたんです。
自分でそれを痛感したのは、つい最近のことです。
「プロなのに」と思われるかもしれません。
ですが逆に言うと、20年近くかけて積み上げてきた身体の感覚と知識があるから、この「気づき」の解像度が高い。
何が変わったのか、なぜ変わったのかを、自分の言葉で説明できる。
今回はそのプロセスをそのままシェアします。
野球選手こそ、まずBIG5をやり込むべき理由
近年、野球でもウエイトトレーニングで体を大きくすることは当たり前になってきました。
野球特有の動きに特化したトレーニングも多く推奨されています。
ただ私は、基礎体力や筋力がまだ十分でない選手が、いきなりバランス系や体幹トレーニングに走るのは順序が逆だと思っています。
体幹トレーニングと称して変わったバランス系エクササイズをやるくらいなら、バーベルスクワットで腹圧を入れて重心コントロールをする方が、よっぽど効果が高い。
BIG5(スクワット・デッドリフト・ベンチプレス・オーバーヘッドプレス・ベントオーバーロウ)を丁寧にやり込むことで得られるのは、筋肉量だけじゃありません。
腹圧の使い方、地面を押す感覚、全身の連動。
これが全てのスポーツ動作のベースになります。
土台のないところに家(技術)は建たない。これが私の持論です。
ベンチプレスで気づいた「復元力」という感覚
BIG5の中で、私が特にこだわっているのが「ネガティブ動作(下ろす局面)の使い方」です。
ベンチプレスを例にすると、バーベルを下ろすとき、引き伸ばされた大胸筋や上腕三頭筋が「元に戻ろうとする復元力」をいかに溜め込めるか。
その伸長を感じながら、筋肉を長く使う意識を持つことで、切り返しの瞬間に爆発的なパワーが生まれます。
これはスポーツ科学でいう「ストレッチ・ショートニング・サイクル(SSC)」、つまり伸張反射の活用です。
野球で言えば、ピッチャーが胸を張って腕を振る瞬間。バッターがトップを作ってからスイングに入る瞬間。
あの「しなり」と「爆発」は、まさにこの復元力の応用です。
力みやいきみを排除して、遠心性(エキセントリック)のイメージを強く持つ。これがスポーツに活きる筋肉を作ると私は感じています。
スクワットはもっと難しかった
同じ感覚をスクワットでやろうとすると、ベンチプレスより格段に難しいんです。
ベンチは肩と肘だけ。
でもスクワットは股関節・膝・足首を同時にコントロールしながら、重心を「ミッドフット(足裏の中心)」に保ち続けなければならない。
切り返しの瞬間に重心が数ミリズレるだけで、復元力が逃げてしまう。
疲れてくると、無意識に使い慣れた大腿四頭筋に頼ろうとして、つま先寄りになる。
せっかくハム・臀筋に溜めたエネルギーが、その瞬間に死ぬんです。
体重71kgで70〜75kgの重量で丁寧に反復しているのも、そのため。
高重量で「挙げること」を優先すると、すぐ元の癖に戻ってしまう。
神経系の再教育には、感覚を追える重量設定が必要です。
身体操作のワークショップが変えた「脛骨粗面」への意識
転機になったのが、身体操作・動作改善をテーマにしたワークショップで体感した「脛骨粗面(けいこつそめん)」への意識です。
脛骨粗面とは、スネの骨の前面にある出っ張り。

ここに意識を向けながら動くと、足首・膝・股関節の三関節の協調がスムーズになり、腰への負担が軽減される感覚があります。
これはバイオメカニクスの観点からも、三関節(足・膝・股関節)の連動(トリプルエクステンション)を引き出す上で理にかなったアプローチです。
スクワットに応用すると、「足裏の中心」と「脛骨粗面の位置」の関係に常にセンサーが働いている感じ。
それをうまくつなぎながら股関節から上がってていくと、太もも(大腿骨)が元の位置に戻る時に脛骨粗面も重心線上にスッと戻ってくる。
うまくいった時は、復路で「釘がめり込んでいくように地面を押せる感覚」があります。
これがピッチングで軸足に長く重心を置きながら踏み出す感覚に繋がると確信しています。
まだ投球動作ではハマりきっていませんが、確実に近づいています。

左足が釣った日
私は左利きで、学生時代はファーストを守っていました。野手の送球を受けるたびに右足を踏み出す動作を繰り返したせいか、右足の付け根が1センチほど太い。
その影響もあってか、左足にいくつかの課題があります。
・股関節が外側に逃げやすい
・膝が内側に入りやすい(ニーイン)
・ボトムポジションで股関節に詰まる感覚がある
・下腿が外側に捻じれている感覚
原因として考えているのは、後方関節包の硬さと、大腿骨の前方変位。股関節が正しく「はまっていない」状態です。
これを改善しようと、あるエクササイズを試しました。
椅子に座ってかかとを地面につけたまま、つま先だけを内側に向ける「脛骨内旋エクササイズ」です。
土踏まずが釣りました(笑)。
腓骨周りと土踏まず付近の筋肉が強烈に攣って、親指が外転・屈曲したまま固まりました。
主に母指外転筋(ぼしがいてんきん)という、土踏まずのアーチを支える筋肉です。長年眠っていたこの筋肉に、初めてちゃんとした刺激が入った瞬間でした。
そして釣りが収まった後、左足の親指の向きが右足に近づいていた。普段は人差し指側にわずかに寄っていた親指が、真っ直ぐ前を向いていたんです。
筋肉の硬さではなく、「機能していなかった」だけだったと気づきました。
矯正セッティングで変わった感覚
今取り組んでいるのが、左足のつま先をわずかに内側に向けながら、脛骨は内旋方向に保ちつつ、股関節は正面をキープするスプリットスクワットです。
つま先と脛骨を内側に向けつつ、股関節は逃がさない。
この「雑巾を絞るような逆方向のテンション」によって、膝関節周りのアライメントが整い、大腿骨が臼蓋の奥にグッとはまり込む感覚が生まれます。
左足のボトムポジションでの詰まりはまだあります。
後方関節包のスペースが十分に広がっていないのが正直なところ。
ただ、やるべきことが明確になってきました。
「押しているのに抜重している」という感覚
これらの取り組みを通じて掴みかけている感覚を、うまく言葉にするのが難しいのですが、「押しているのに抜重している」という感じです。
地面を強く押しているのに、身体は浮かない。
力んでいるわけじゃない。骨格が正しく積み上がって、筋肉の復元力が真下に向かっているときだけ起きる感覚です。
バッティングで言えば、軸足に乗せて地面を押し続けながら踏み出すと、優しく踏み出せて、踏み出し足も地面を捕まえに行く感じで体が浮かない。下半身から上半身・腕へと連動が繋がる。
これが「地面反力を使う」ということの本当の意味だと、今さらながら腑に落ちています。
おわりに
20年やってきて、まだ新しい感覚に出会えます。
理論だけでもダメ。感覚だけでもダメ。
自分の身体の「違和感」を入り口にして、解剖学や古武術や筋トレの知識を総動員して、少しずつ答えに近づいていく。
このプロセス自体が、指導者としての財産になっていると感じています。
皆さんも、トレーニング中に感じる「何かおかしい」という感覚を、ぜひ大切にしてみてください。
そこに、まだ見ぬパフォーマンスへの入り口が隠れているはずです。
執筆者:布瀬川謙介(東中野・落合パーソナルジム「BODY UPDATE LABO」トレーナー)
パーソナルトレーナー歴18年。野球経験と身体操作の学びを融合させながら、日々現場でアップデートし続けています。
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