フォームを直したのに変わらない理由|「部分」の修正が「全体」を崩すという話
2026/09/30
「肩を下げて!」と言われて、意識して肩を下げてみる。
それなのに、パフォーマンスは変わりません。
むしろ動きがぎこちなくなった気さえします。
こんな経験はないでしょうか。
あるいは、フォームを意識して動いたつもりが、後で動画を見返すと「これ誰?」と思うくらい、イメージと違う動きになっていたということもあるかもしれません。
これは、気合や意識が足りないからではありません。
体の仕組みそのものに理由があります。
体は「部分」では動いていない
体は、パーツごとにバラバラに動くわけではありません。
骨・関節・筋肉すべてが繋がって、一つのシステムとして連動しています。
肩が上がっているのが気になるからといって、肩という一点だけを意識して下げようとする。
これは、システム全体の中の一部分だけを、力ずくで動かそうとしている状態です。
全体のバランスが整っていないまま、一部分だけを変えようとすると、他の部分にしわ寄せがいきます。
結果、見た目の形は変わっても、動き全体としては良くなっていません。
むしろ他のどこかが余計に頑張ることになり、動きがぎこちなくなったり、パフォーマンスが落ちたりすることさえあります。
姿勢が崩れていると、体がそれを支えるために勝手に力んでしまうという話は、以前[スポーツのパフォーマンスを底上げする「骨格」の力]の記事でも触れました。
これも同じ構造で、土台(全体のバランス)が整っていないところに部分的な修正を重ねても、根本は変わらないということです。
意識した動きと、実際の動きがズレる理由
「意識してやったのに、思った通りの動きになっていない」という現象も、同じ理由で説明できます。
脳から出せる指令は、基本的に部分単位です。「肩を下げる」「肘を伸ばす」というように、パーツごとの指示になります。
ところが、体が実際に反応するのは全体単位。一つのパーツへの指令は、必ず他のパーツの動きに影響します。
だから、頭の中で描いていた「意識した動き」と、体が実際に出力した「本当の動き」の間には、ズレが生まれます。
動いている最中に違和感を覚えたり、後から映像で見て驚いたりするのは、このズレが可視化された瞬間です。
では、何をすればいいのか|肩の例で考える
ここまでの話だけを聞くと、「意識して動かすこと自体が無意味」だと思うかもしれません。
ですが、そうではありません。
大事なのは、何を意識するかです。
そして、その一番大事な部分こそ、当ラボが最も大切にしている考え方です。
それは、骨や関節が今どこにあって、どう動いているのかを、自分自身で把握するということです。
肩が上がってしまう人の多くは、胸の筋肉(大胸筋)が硬くなっていたり、首まわりの筋肉(僧帽筋上部)に頼って肩を動かすクセがついていたりします。
ですが、いきなりその筋肉だけにアプローチしても、根本的な解決にはなりません。
まず必要なのは、肩甲骨や鎖骨、背骨がどこにあり、どう動いているのかを自分で認識することです。
骨組みのどこがどう崩れているのかを把握しないまま筋肉だけを鍛えても、崩れた骨組みの上に筋力がつくだけで終わってしまいます。
その上で行うトレーニングも、ただ筋肉に効かせることが目的ではありません。
骨や関節がどう動くのかを認識しながら、その動きを自分でコントロールし、そこに必要な筋肉(僧帽筋の中部・下部や広背筋など、普段使われにくい筋肉)を動員していく。
これが、当ラボが習得していただきたい一番大事な部分です。
こうして骨格の認知と筋肉の働きが揃うと、体の前後・左右で引っ張り合う力(張力)のバランスも整っていきます。
そして、バランスが整った状態で実際に体を動かす段階になると、今度は感覚やイメージが重要になります。
「肩甲骨を力で下げる」のではなく、「重力に従って自然に落ちている」「肩甲骨の下にポケットがあって、そこに収まっている」といった感覚を持ってもらいます。
力任せに形を作るのではなく、骨格を認知しながら、感覚を通して全体の状態に近づいていく。
この段階を踏むことが、部分修正との決定的な違いです。
体幹でも同じことが起きている
このロジックは、肩に限った話ではありません。体幹でも同じことが起きています。
「体幹を鍛えて、姿勢を安定させたい」という相談は多くいただきます。
ただ、お腹の筋肉をただ縮めて固めるだけでは、背中側の緊張はむしろ強くなることがあります。
体の前側と後ろ側、内側と外側は、互いに引っ張り合いながらバランスを取っています。
片方が緊張したままだと、もう片方は緩みにくくなります。
背中側の緊張を抜きたいなら、お腹側のテンション(張力)を高めてあげればいい。
前側がしっかり働くことで、後ろ側は自然と力を抜きやすくなります。
これも、「背中の緊張を直接取ろう」とする部分的なアプローチではなく、体全体の張力バランスを通して結果を出す考え方です。
この感覚がどういうものか気になる方は、[「力を抜いて」と言われてもできない理由]の記事も参考にしてください。
まとめ
部分だけを直そうとすると、全体のバランスを崩すことがあります。
大切なのは、結果(肩の位置、背中の緊張)ではなく原因に目を向け、骨や関節の位置・動きを自分で認識しながら、体全体のバランスを整えていくこと。
そして、そのバランスの上で実際に動く時には、力任せではなく感覚やイメージを使います。
この順番を踏むことで、意識した動きは少しずつ、意識しなくてもできる「状態」に変わっていきます。
一人で原因を特定し、骨格を認知しながらバランスを整えていくのは簡単なことではありません。
当ラボでは、対面でその原因を見極めながら、一緒にトレーニングを重ねていきます。
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執筆者:布瀬川謙介|東中野・落合のパーソナルジム「BODY UPDATE LABO」トレーナー
パーソナルトレーナー歴18年。骨格構造に基づいた「体の正しい使い方」を追求し、理にかなった動作という視点から分析・指導を行っている。
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